PBL教育実践ガイド

PBLにおける成果発表会の設計と運営:学習成果の共有と学びの深化を促すには

Tags: PBL, 成果発表会, 学習成果, 評価, 運営

はじめに

高等教育におけるPBL(課題解決型学習)では、学生が長期にわたり取り組んだ課題に対する成果を、他者に対して発表する機会が設けられることが少なくありません。この成果発表会は、単に成果を披露する場ではなく、PBLにおける学習プロセスと成果を統合し、学生の学びをより深化させるための重要な機会となり得ます。

本記事では、PBLにおける成果発表会の目的、効果的な設計方法、運営上の留意点、そして学習成果をどのように評価・活用するかについて、高等教育機関の教職員の皆様の実践に役立つ情報を提供いたします。

成果発表会が持つ目的と効果

PBLにおける成果発表会は、多岐にわたる目的と効果を持ちます。これらを理解することは、発表会を成功させるための基盤となります。

効果的な成果発表会の設計

成果発表会を計画するにあたっては、その目的を明確にし、それに沿った設計を行うことが不可欠です。

1. 目的の明確化

まず、成果発表会を通じて何を達成したいのかを具体的に定めます。例えば、「学生の学びを可視化し、振り返りを促す」「外部関係者からの評価を得る」「学生の発表能力を育成する」など、目的に応じて発表形式や評価方法が異なります。

2. 形式の検討

発表会の形式は、目的に合わせて選択します。一般的な形式としては以下のようなものがあります。

3. スケジュールと場所の確保

開催時期、時間、場所、期間を計画します。他の学事日程との調整、必要な設備(プロジェクター、スクリーン、音響、掲示スペースなど)の確認と手配を行います。オンライン開催の場合は、使用するプラットフォームの選定や、学生・参加者のオンライン環境への配慮が必要です。

4. 評価方法と基準の設定

成果発表会を評価の機会とする場合、評価の目的(形成的評価か総括的評価か)、誰が評価するのか(教員、TA、学生同士、学外専門家など)、何を評価するのか(内容、発表スキル、質疑応答など)、そして評価基準(ルブリックなど)を明確に定めます。評価者に対しては、事前に評価基準の共有と簡単な説明会を行うことが望ましいです。

5. 参加者の設定と広報

誰に成果発表会に参加してほしいかを決定します。学内関係者(他の学生、教職員)、学外関係者(企業、地域社会)、一般市民など、対象に応じた広報戦略を立て、適切なチャネル(学内ポータル、ウェブサイト、SNS、プレスリリースなど)で告知します。

成果発表会の運営上のポイント

設計した計画を実行に移す際には、円滑な運営のための準備と配慮が重要です。

大規模な発表会の場合、会場のゾーニング、誘導計画、休憩時間の確保など、より詳細な計画が必要です。オンライン開催の場合は、接続テスト、画面共有の方法、チャット機能やブレイクアウトルームの活用方法などを事前に確認し、学生・参加者への案内を徹底します。

成果発表会の評価と結果の活用

成果発表会で得られた評価やフィードバックは、学生の学びに還元するだけでなく、PBLプログラム自体の改善にも繋がります。

おわりに

PBLにおける成果発表会は、学生が自らの学びを統合し、他者と共有し、新たな学びを得るための貴重な機会です。目的を明確にした丁寧な設計と、円滑な運営、そして得られた評価やフィードバックの適切な活用を通じて、成果発表会をPBL教育の一環として最大限に活かすことが期待されます。本記事が、貴学のPBL教育における成果発表会実践の一助となれば幸いです。