PBL教育実践ガイド

PBL導入・推進を支える教員研修とサポート体制の構築

Tags: PBL, 教員研修, FD, サポート体制, 大学職員, 大学教員, 教育開発

PBL導入・推進における教員サポートの重要性

高等教育機関におけるPBL(課題解決型学習)の導入と定着は、学生の深い学びや自律的な学習能力の育成に大きく貢献する可能性を秘めています。しかし、PBL型授業は従来の講義形式とは異なり、教員には新たな役割とスキルが求められます。PBLを効果的に実践するためには、教員が直面するであろう様々な課題を克服し、自信を持って取り組めるような組織的なサポートが不可欠です。

大学全体でPBLを推進するためには、単にPBLの理念を共有するだけでなく、実際に授業を設計・実施・評価する教員が安心して挑戦できる環境を整備することが極めて重要になります。本稿では、PBL導入・推進を支えるための教員研修とサポート体制の構築に焦点を当て、大学として具体的に取り組むべき方策について詳述します。

PBL実践における教員の課題

PBLを実践する教員は、多岐にわたる課題に直面する可能性があります。これらの課題を理解することが、効果的なサポート体制構築の第一歩となります。

主な課題としては、以下のような点が挙げられます。

大学として提供すべき教員サポートの種類

これらの課題に対応するため、大学は多様な側面から教員を支援する体制を構築する必要があります。

1. 教員研修(FD)プログラムの実施

PBL実践に必要な知識とスキルを体系的に習得するための研修プログラムは最も基本的かつ重要なサポートです。

2. 個別相談・メンタリング

研修だけでなく、個別の状況に応じたきめ細やかなサポートも有効です。

3. 情報・リソース提供

PBL実践に必要な情報やツールへのアクセスを容易にすることも重要です。

4. コミュニティ形成とネットワーキング

教員同士が互いに学び合い、支え合えるコミュニティを育むことも、持続的なPBL推進には不可欠です。

5. 制度的サポートとインセンティブ

PBL実践には時間と労力がかかるため、制度的な配慮やインセンティブも考慮すべきです。

サポート体制構築のための具体的なステップ

効果的な教員サポート体制を構築するためには、計画的かつ組織的なアプローチが必要です。

  1. 教員のニーズ把握: PBL実践に関する教員の現状のスキルレベル、関心、抱える課題、必要とするサポートの種類について、アンケートやヒアリングを通じて詳細に把握します。
  2. 既存リソースの棚卸しと連携: 学内に存在する教育開発センター、ICT推進部門、図書館などの関連部署や、PBL実践経験のある教員などのリソースを把握し、連携体制を構築します。
  3. 目標設定と計画策定: どのような教員サポート体制を目指すのか、具体的な目標を設定し、研修プログラム、相談体制、情報提供などの計画を策定します。誰が、いつまでに、何を行うのかを明確にします。
  4. 組織内の役割分担と予算確保: サポート体制の運用における各部署(教育開発センター、学部、教務部など)の役割を明確にし、必要な予算を確保します。
  5. プログラム・サービスの実施と周知: 計画に基づき、研修プログラムの実施、相談窓口の開設、情報ポータルの構築などを行います。これらの取り組みについて、学内全体に効果的に周知します。
  6. 効果測定と継続的な改善: 提供したサポートが教員のPBL実践にどのように貢献しているか、定期的に効果を測定します(例:研修参加者の声、PBL実践教員の増加、授業改善の状況など)。得られたデータに基づき、サポート内容や方法を継続的に改善していきます。

まとめ

高等教育におけるPBLの成功は、何よりもそれを担う教員の力量と意欲にかかっています。大学がPBLを戦略的に推進するためには、教員が直面する多様な課題を理解し、研修、個別サポート、情報提供、コミュニティ形成、制度的支援といった多角的なサポート体制を組織的に構築・運用することが不可欠です。

こうした支援体制は、教員がPBLを効果的に実践するためのスキルと自信を育むだけでなく、PBL実践への心理的なハードルを下げ、より多くの教員が新しい教育手法に挑戦する意欲を持つことにつながります。結果として、大学全体の教育の質向上と、学生の育成目標達成に大きく貢献することになります。大学職員、特に教育開発センターの皆様は、PBL推進の鍵となる教員サポートの充実に、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。